『ネクスト・ロック・ゲート』
国家機関のパフォーマンス
掲載:2016/8/30 14:05
先週末は、超巨大な新規O店にガイド系ライターが多く集まる某メディアの取材が入りました。
攻略メディアを使って集客するくせに、攻略メディアが唱えている立ち回りを実践すると追い出されるって、話がおかしくないか――?
今さらながら、素直に言うことを聞かず、ツッコんでやれば良かったか、などと後悔しております。
そんな昨日に鑑賞した映画が、こちら――
それでもボクはやってない
『ファンシイダンス』『シコふんじゃった』『Shall we ダンス?』を手掛けた周防正行監督が、2007年、世に問うたニッポンの裁判。
これを観てみようと思ったきっかけは、こちら――
冲方丁のこち留(とめ)
こちら渋谷警察署留置場
『天地明察』『マルドゥック・スクランブル』『テスタメントシュピーゲル』『蒼穹のファフナー』を手掛けた、作家・冲方丁がDV容疑で逮捕というニュースが流れたのは、昨年8月のこと。
ぶっちゃけ、自分は冲方さんがDVを働いたかどうかなんて、どうでも良かったです。冲方さんの作品に心を動かされた――これだけが自分にとっての事実。こんなくだらない騒ぎは、さっさと終わらせて続きを書いてくれや、としか思わなかったよ。
結局、この騒動は9日間の勾留ののち不起訴処分で釈放という結末を迎えるのですが、その9日間の様子をまとめた手記が本書です。
まっ、藤田まことの人情刑事や、木村拓哉の一見チャラ男だが実は正義漢の検事も、国家機関のプロパガンダだわなあ。刑事裁判の有罪率99.9%という数字を捜査機関の優秀さと捉えるなど冗談じゃありません。
ともかく、本書を読むと、有名人の逮捕というのは国家機関のパフォーマンスであり、それを報道するワイドショーは庶民に日頃たまった怒り / 不安 / 鬱屈を解消するためのエンターテインメントなのだということが、よく分かります。
渋谷警察署留置場で着用させられたというジャージ
冲方さん同様、不起訴に終わる人も相当数いるだろうに、そうした人たちを相手に「留QLO」とかユーモアのセンスが酷すぎるよねえ。
また、これらの作品に触れた人の中には、弁護士がこうした理不尽に抵抗するための盾だと感じた方がいると思いますが、それはちょっと違います。
人が言うことにロクに耳を貸さず、示談金いくらで納めるかという方向で動いていた弁護士が、調査を進めるうちに相手側の偽証の証拠に突き当たり、「これ勝てますよ、むしろお金取れますね」と言い出し、嬉々として動き出した時は、「だから、最初から本当のこと言ってるつっただろうが!」と怒鳴りつけてやりましたよ、自分は。
揉めごとの仲裁に現れて、手数料を取って行くのが弁護士の商売。民事で負けると見込んだ裁判に手を出す弁護士はいません。一人の弁護士が匙を投げた案件は、あっという間に弁護士間に広がり、以降はどこの事務所の門を叩いても門前払いになります。
こうなると、頼らざるを得ないのが反社会的組……もう、ヤメときますね。自分の話にピンと来ない人は幸せだと思います。このまま平穏な一生が送れるといいですね。
それにしても、国家機関がちゃんと機能していることをアピールするための、このパフォーマンス――
賭博罪でスポーツ選手が次々と逮捕された騒動も、その一環なんでしょう。もしかすると、今のこの業界の騒動にもそういう側面があるのかもしれません。
「社会の信頼回復に努める」という言葉を口にする業界人は多いけど、警察庁の信頼を回復した頃には、すっかり遊技としての魅力を失い、庶民からは愛想を尽かされ、万々歳は自らが機能していることをアピールした上、60年前のミスジャッジのリカバリもできた警察庁だけ、なんてオチが待っている気がするのは自分だけだろうか?