ブログMANIA
【ザッシュ】
Profile

『ネクスト・ロック・ゲート』
甲鉄城のカバネリ
掲載:2016/5/31 11:35

「たとえ自分が助かるためだとしても、誰かの命を踏みにじってはならない」


これは、現在ノイタミナ枠で放送中のアニメ『甲鉄城のカバネリ』の主人公・生駒(いこま)のセリフである。

この作品の舞台になるのは、東西大名による一大決戦の結果、西国大名が勝利して幕府を開府した、ユーラシア大陸の東に位置する島国「日ノ本」

諸外国と積極的な交流を行った日ノ本には海外から様々な技術が流入し、その中でも目覚ましい発展を遂げたのが「蒸気機関」である。蒸気機関は鉄道のみならず工業機械や銃器にも用いられるようになり、日ノ本においては火薬銃より蒸気銃が主流になっているほどだ。

しかし――

その一方で、迷信として前時代に葬り去られたものも流入して来るようになった。

鋼鉄の被膜で覆われた心臓を破壊しない限り滅びず、生者の生き血をすすり、同じ化物と為す屍 = 「カバネ」九州地方に上陸したそれが日ノ本を蹂躙するのには、それほど長い時間を必要としなかった。

当代将軍は、カバネに対抗するため日ノ本各地の重要拠点を要塞化する。鉄道網の要所に作られたそれらの砦は「駅」と呼ばれ、人々は駅に閉じこもって暮らすようになった。

要するに『甲鉄城のカバネリ』の世界観を一言でいうなら、スチームパンクとゾンビパニックの融合である。

顕金駅(あらがねえき)に暮らす蒸気鍛冶の少年・生駒は、幼いころカバネに襲われ、共にいた妹を見捨てて逃げ出してしまった過去を持つ。冒頭のセリフに、その時の自分に対する悔恨が込められていることは想像に難くないだろう。

だが、生駒は偽善者である。食卓の上に乗っているものを見てみるといい。誰かの命を踏みにじらずに生きている人間など1人もいやしない。その偽善的な本質があらわになるのは、第2話『明けぬ夜』のラストシーンだ。

乗務員がカバネに変わり、暴走した駿城(はやじろ・こちらの世界で言うなら、装甲蒸気機関車)に突入され、顕金駅はカバネに飲まれてしまう。生駒はカバネに対抗するため独自に開発した武器「ツラヌキ筒」によってカバネを倒すが、その際に噛まれ、カバネと人の狭間にあるもの――「カバネリ」となってしまった。

顕金駅を治める四方川家の惣領・菖蒲(あやめ)ら、生き残った人々は唯一残された駿城・甲鉄城に避難し、駅からの脱出を図るが、出口にある跳ね橋が下りない。手動で線路脇のレバーを操作するしかないが、誰かがカバネであふれ返った外に出ることは即座に「死」を意味する。

そんな時、武士の来栖(くるす)に撃たれて甲鉄城から放り出された生駒が現れ、言ったセリフがこれである。


「見ろ、俺を見ろ。

お前らが蔑んだ男が、血を流して死ぬところをよく見ていろ。

俺がお前らを助けてやる。

見捨てた奴に助けられた記憶を、ずっと抱えて生きて行け。

それを俺はあの世から笑ってやる。

ざまあみろってなあ!」


何たる卑しさ――。

これを翻訳すると「見捨てられた当てつけに死んでやるからな」だ。

しかし、身を挺して人々を救った生駒の行動は正しい。

つまり、『甲鉄城のカバネリ』とは、自分の弱さや卑しさに直面しながらも正しくあろうとする少年の物語なのである。

さて――

人間の金銭欲や名誉欲につけこんだ商売ゆえ、そこに出入りする限り、自分の弱さや卑しさに直面させられる施設 = パチンコ屋。

「パチンコはギャンブル。依存を生み、人を借金まみれにするからいかん!」とヒステリックにわめきちらすアンチは、何か履き違えていると思う。自分の弱さや卑しさとどう向き合うかが問題で、それに直面させられる遊技や施設を害悪視しても仕方ないだろう。

そもそも、法解釈上ギャンブルとされていないのだから、パチンコをギャンブルとするのはあくまでもアンチの個人的な解釈である。

こういう人種が生まれるのも、タバコや酒を含む「悪徳」とどう向き合うかを教えず、ただ「いけません」と伝える学校の情操教育に問題があるんだろうね。

とは言え、「ボクたちはパチンコ・パチスロのゲーム性が好きで打ってるんです」と建前論を掲げて、自分の弱さや卑しさを隠す連中もどうかと思う。

そんなことを言っていた人間が、確定台が空くと同時に周囲もドン引く勢いで確保する様子を、自分は過去に何度も見ているから――。

また、そうしたパチスロのゲーム性を伝えることに長けたライターの中には、ギャラが発生する取材・撮影はもちろん、プライベートでも良い店をたくさん知っている立ち回り巧者のため、パチスロを打つという行動のすべてを金銭に変えている人がいるが、そうした自分の核心には触れず、自分の弱さや卑しさを隠す連中の建前論を補強することでさらに金銭を得ているのが気に入らない。

ただ弱者をそそのかすのって、どうよ――?

自分に都合のよいことを言ってくれる奴は、大抵が「悪魔」なんだぜ。

ともあれ、家族や友人に経済的な負担を押し付けることなくパチンコ・パチスロと向き合えているなら合格。あとは、その中でどうあるべきかを考えて行かねばならない時代だと思う。

プロ野球選手の野球賭博、バドミントン選手の違法カジノ通いと、ギャンブルをめぐるスキャンダルが表面化している現在、パチンコ業界がなくなったら出さなくてもいい犯罪者が巷にあふれるようになるだろう。

その防波堤たるこの業界を、薄っぺらい建前論で守れるのかねえ――?
感想メールを送る

ご利用案内お問い合わせ
特定商取引法に基づく表記