『ネクスト・ロック・ゲート』
警察庁の意図と間抜けな船室係
掲載:2015/8/14 13:25
毎年、今の時期になると放送される戦時中の様子を伝える特番――。
それを観ていて、大戦末期、日本の新聞が戦況の悪化を国民に伝えようとしなかった件が、この業界の何かに似ていると感じました。
8月3日、遊技産業健全化推進機構が「遊技機性能検査」の結果を発表したんですが、それによると、6月は全国7地区23店舗の32台を調査。1台あたりの打ち出し球数は2,650~3,701個(平均3,032個)で、一般入賞口への入賞が確認された遊技機は9台(28.1%)。入賞個数は1~3個が4台、4~6個が4台、7~9個が1台。
一方、7月は全国25地区76店舗の124台を調査。1台あたりの打ち出し球数は2,069~3,220個(平均2,929個)で、一般入賞口への入賞が確認された遊技機は53台(42.7%)。入賞個数は1~3個が37台、4~6個が11台、7~9個が4台、10個以上が1台となっておりました。
この調査結果を受け、推進機構では「一般入賞口の入賞状況調査結果としては
保通協試験時の状態からは『ほど遠い』状態の遊技機が市場に設置されていると思われる」と指摘。
また、「時系列的には7月調査時に一般入賞口に入賞する遊技機の台数の割合が増えており、一般入賞口の入賞球数も、3,000個の打ち出しに対して2桁に達した遊技機も確認されるなど『市場においては改善の兆しが少し見られる状況になった』と判断した」としているのですが、この評価で怖い文言は朱記の部分でしょう。推進機構的には「ベース50、スタート3以下」を然るべき状態と判断しているという事です。
通報猶予期間終了後、12月から警察がどう動くのかを所轄や県警に問い合わせても、警察庁からは指示が下りて来ていないので分からないのだと言います。だとすると、6月に福井県警がゲージ棒を持って県内のホールを検査して回った事例は県警の独自判断という事になりますが……ともあれ、現場の警察官からすると「聞かれても分からないから、推進機構の言う通りにしとけ」としか言いようがないそうです。
しかし、「ベース50、スタート3以下」なんて調整を施された台など誰も打ちません。1分間に玉を50個ずつ減らしつつ、その間デジタルは2~3回しか変動しないのだから、ほぼ止まった液晶画面を眺めながらハンドルを握っている遊技になります。
大戦末期の新聞と、この業界の何かが似ていると思った件――AT機・MAXタイプ規制前の駆け込み供給で、今から11月末までに出荷される遊技台の台数は昨年の半年分にあたる150~160万台なんて話がありますが、「パチンコ」というジャンルの遊技機が事実上市場から消えるかもしれない危機を前に「新台わっしょい祭り」をしている攻略メディアは戦時中の新聞社か、と?
まあ、攻略メディアはメーカーに飼われた広告宣伝機構に成り下がり、そこに所属するライターと名乗る先生方は意識の低いユーザーから「ウケる」ために言論・執筆活動を展開しているわけだから、「釘問題」を始め、今、警察庁は何を問題視して業界への規制を強めているのかを暴き出し、業界が存続するためにどうすればよいかを世間に進言するなどという事は期待する方が間違っているとも思うんですけどね。
このように強硬な指導・規制の後は、大掛かりな法・規則改正が待っているのが今までの常です。
「釘は盤面と一体成型されている事」などと遊技機規則に書かれてしまった後には、集客のため全国一律低換金率化もへったくれもありません。どこで打っても変わらないんだから、優良店 = 高換金率店。控除率を20%近くに設定しないと経営できないホールは自動的に潰れます。
もし、そうなった場合、自分がホールオーナーなら事業をメーカーに売却しますね。高還元率で営業できないボッタクリ同業他店が潰れた後、集客の全てはメーカーが作る「台のデキ」にかかって来ますもんね。
導入機種・台数をミスったら、即命取り = 今でもそういう部分がありますが、利益調整が不可能である以上、ホールはメーカーが負うべきリスクを100%代替わりする商売という事になります。
とてもそんなのにつき合ってられません。台を作ったあんたたちでやってくださいって話ですよ。
で、ホールから事業の売却を受けたメーカーは、ホール企業が上場できないのと全く同じ理由で国内市場での上場を取り消され、パチンコ業界はさらに縮退する、と――。
みなさん、ご存知ですか? 国内ではグレーと呼ばれ、ホール企業が上場できない理由になっている「三店方式」のスキームは、海外投資家に説明すると納得するものだという事を。
むしろ海外投資家からは、多大な開発経費をかけてもヒットするかどうか分からない遊技機を製造するメーカーの業務こそ投資に値しないものだと見られています。ホールが利益調整手段をもって支えなければメーカーはおしまいでしょう。
とりあえず、自分が思うに警察庁の意図――その核心にあるものは
「組織の面子」です。カジノ法案の絡みで盛んになったパチンコ業界をめぐる議論。その中で世間から問題視され、監督責任を問われそうなところを片っ端から叩いて平らにしている。今はそういう状況でしょう。
「警察はこの業界を守ろうとしてくれている」などという業界人もいますが勘違いもはなはだしい。業界は襟を正し、非を認めるべきところは認め、酌量を求めるべきところは求めて行かないと、世間から問題視どころか問題にもされないレベルまで警察に叩き潰されます。
ホント、難しいわなあ。「脱法的集客手段」と警察庁が苦言を呈するライター来店取材の存続を願っているライターの先生方に、こうした事を世間に進言するのを期待するのはさ。
進言するため襟を正すのは自らの減収を意味するわけだしな。
奴ら、巨大な暗礁に乗り上げた船の中で、沈没する事より乗客からもらうチップの心配をしている間抜けな船室係みたいだ……。