『ネクスト・ロック・ゲート』
遊技機性能調査の真意
掲載:2015/6/29 08:00
突然ですが、あなたの仕事は品質管理です。とある工場で出来上がった製品が自社の規定通りに作られているかをチェックしています。
すると、あるラインから規定に合わない製品が出ているのを見つけました。あなたはそのラインの責任者を呼び、「ちゃんと規定通りに作ってくれないと困るよ」と指導するでしょう。当然のことです。
しかし、そのラインの責任者の口から出てきたのは次のような言葉でした。
「じゃあ、会社の規定をこの製品に合うように変えてください」
さて、あなたはどのように反応しますか?
(1) なるほど! 逆転の発想だね。そのように規定を変えよう。
(2) はあっ!? バカかおめえ。
普通は(2)だと思います。(1)じゃ品質管理や検査部門がある意味……いや、規定や規則がある意味がない。
それにしても、警察庁の指導は毎度ながら真意が見えにくいものです。まず、以下の「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」から抜粋した規定を読んでください。
(遊技球の獲得に係る遊技機の性能に関する規格)
(ホ) 遊技球の試射試験を10時間行つた場合において、獲得する遊技球の数のうち役物の作動によるものの割合が7割(役物が連続して作動する場合における当該役物の作動によるものの割合にあつては、6割)を超えるものでないこと。
6月27日にUPした記事のデータを例に話を進めますが、この日の試行は1701Gです。つまり、1701×3=5,103コ。アタッカー(役物の作動)による出玉は264Rですから、264×84.4=22,281.6コです。さあ、27,384.6コの6割は何コでしょうか?
別格に優良なO店wは一般入賞口がフラットなのでそこそこ入賞します。また、通常時には中央入賞口(ヘソ)へのオーバー入賞がありますし、
ぱちんこAKB48 バラの儀式 Sweet まゆゆ ver.はMUSIC RUSH突入時に保留していた乱数を全て消化してしまう機械です。そして、1R=84.4コというアタッカーによる出玉には電チューやMUSIC RUSH役物で得られた賞球を含んでいるので、実際は18.6 : 81.4なんて比率ではありませんが、それを考慮しても40 : 60には程遠い数字ですよね。ましてや、この日はヒキ弱で理論値より大当たり(役物の連続作動)が7.34回も少なかったわけだし……。
というわけで、お分かりいただけたでしょうか? 警察庁が「一般入賞口に玉が入らないのはおかしい」なんて言い方で遊技産業健全化推進機構に「遊技機性能調査」を依頼した真意はここなのです。要するに「お前ら、釘を曲げる事で型式試験通過時とは異なる出玉性能を作り出してるだろ?」という事。
で、ここからは差し障りがあると思うので100%自分の推測という事にして読んで欲しいんですが、ホール側が警察庁の言う通り一般入賞口に玉が入るように調整を直せば済むなら話は簡単なんですよ。ところが、別格に優良なO店wのように一般入賞口に関わる釘をフラットにしても型式試験を通過した際の性能は現れない。どうやら、フラットな状態は型式試験を通過した際の釘 = 諸元表通りの釘ではないらしい。
メーカーからは一般入賞口に寄せるため、いびつに釘が曲がった台が納品されているんだろうか? ――もちろんそんなはずないわな。メーカーも諸元表通りの釘で出荷していないという事です。
すべてのホールは営業取消、パチンコメーカーは5年間の検定申請資格剥奪という最悪の事態を警察庁の温情で回避できている状況で、自分が恐ろしく思えるのは、検査対象外のサブ基板に出玉性能を隠すことで世に出た昨年以前のAT機しかり、遊技機規則上、出てはいけないものが出回って、それを我々は合法だと思い込まされていた事――。
だから、メーカー以外の業界人からは遊技球の獲得に係る遊技機の性能に関する規格で役物比率を60%から80%にしてもらえるよう陳情しようなんて話が出るんだろうなあ。それがこの「釘問題」で収まるべき場所だと思う人は記事冒頭の寸劇の回答で「(1)!」と答える人でしょう。頭がおかしいですって。
警察庁への陳情で収まると楽観しているのか、はたまたあまりの衝撃の大きさに思考停止に陥っているのか、6月23日以降、識者たちがピタリと口を閉ざす中、メディアでは次々と新台が発表されていくのも恐ろしい。
それ、諸元表通りの釘で出荷されるんですか? 一般入賞口にばかり入って、中央入賞口にはなかなか入らず、ほぼ止まった液晶画面を眺めながらハンドルを握っていても楽しい台なんでしょうね?
まっ、台が売れなくなったり、客が打たなくなるような話を、この業界のメディアがするはずないわな。この機に、自分たちはお金を払って企業のCMを買っているだけだったのだと理解していただければと思います。
CMの煽りに乗って玉砕したり、「新台でいきなり回収するから客が減り続けるのだ」などと言う不勉強な方には、今、この業界で何が起きているのかを教えてあげてください。年内いっぱいで使えなくなるであろう機械でサービスするホールなどございませんから。