『ネクスト・ロック・ゲート』
版権にまつわるエトセトラ
掲載:2015/2/11 12:00
最近、時代劇パチンコが出ないなーなんて思ってた時に発売される藤商事の暴れん坊将軍。しかし、その機種名は版権名の後に「怪談」が付いていた……。
保留変化のフォーマットが
ぱちんこAKB48(初代)に似ており、VFXでホラーな悪霊・妖怪など、意外に面白い機種なんじゃないかって気がしますがPVをチェックしただけの感想なので断言は致しません。
ただ、ホラーパチンコ =
リング 呪いの7日間で手にした名声というものは、これほどまでにクリエイターの発想を縛るものなのか、と。
リング 呪いの7日間以降、他社を含め、数多くのホラーパチンコが登場しましたが、どれもパッとしませんものね。
この台は、その機種名通り、多くの遊技台開発者を呪いにかけてしまったのではないかと思います――成功は呪いに等しい。
念のため、嘲ってるわけじゃないですよ。
暴れん坊将軍 怪談を「意外に面白い機種なんじゃないか」と書いた通り、純粋に「成功」という経験が特定の方向に人の思考を縛り付けてしまう事が興味深かったのです。
てなわけで、今日はちょっと「版権物」について話をしましょうか。
現在は版権物黄金時代。最近、自分が好んで打っているルパン三世がホールで産声を上げたのは1998年なんですが、この当時は版権とのタイアップ機がさほどメジャーな存在ではなく、大部分はセグやドット、メーカーオリジナルのキャラクターを液晶演出に採用したデジパチでした。
1998年は、丁度、CRデジパチの確率変動による連チャンが5回(80R)までと規制された時期でもあります。
この影響は甚大で、メーカーからリリースされるパチンコ新機種が大幅に減ったんですが、そうした中、一般に知名度の高いキャラクターの採用で今までパチンコを打たなかった新規顧客を開拓し、出荷台数20万台を超える大ヒットとなった
CRルパン三世K /
CRルパン三世A /
ルパン三世Vは、今の版権物黄金時代を築く礎となった機種と言えるのかもしれません。
で、自分の突っ込みどころは良く聞く話。「高い版権料を支払うなら、メーカーオリジナルのキャラクターで安価な機械を……」という議論についてです。
確かにねえ、これは一理あるんですよ。しかし、問題はメーカーオリジナルのキャラクターがパチンコ未経験の新規顧客に対して一切の訴求力を持たないという点です。
直近の機種ではマルホンの
野菜の王国~サニーとルナの大収穫祭~がそれに当たりますが、この機種など、作る方も買う方も頭がおかしい。
リーチ後の妖精群が重要ポイント / シンプルで分かりやすい演出構成 / 潜伏確変などユーザーの不安要素になる演出を一切排除、と初心者でも安心して遊べるスペックが売りなんですが、そもそもパチンコの事をよく分かっていない初心者(新規顧客)はこんな得体の知れない台に惹かれてホールに足を運ばないでしょう。
しかも、A7α / M / A 全てのスペックの等価ボーダーが20G/1kを超える激辛台。分かりやすく言うと
まわるんパチンコ大海物語3タイプです。
今時のパチンコ屋に、こんな激辛台を預けたらどうなるか……。
初心者(新規顧客)にとって全然安心できませんね。この台、ホント、誰を殺る気で作ったの?
「こんなワケの分からねー台の企画通してっから三流なんだよ!」と、誰かがマルホンに言ってあげた方が親切だと思います。
話が逸れました。ともかく、新規顧客の獲得が課題の一つである現在の業界において、メーカーオリジナルのキャラクターの採用はあまり得策ではないのです。
次に既存の版権に匹敵するキャラクターを作ろうとした場合、版権料より多くの費用がかかってしまう側面もあるという事。
例えば、AKB48と同レベルのアイドルパチンコを作ろうと考えた場合。
芸能事務所に相談したら、そこに所属しているアイドルユニットを売り込まれるのがオチですから、オーディションでメンバーを集める所から始めねばなりません。
メンバーを集めたらレッスン、楽曲の発注、振り付け、衣装の制作……etc.
メーカーは版権使用料を支払い、既存のアイドルグループを使った方が時間がかからないし、安上がりですって。
オリジナルのキャラクターを創造する事の大変さは、販社・フィールズの出資した漫画誌『HERO’S』を見ても分かるんじゃないでしょうか。
創刊から早や3年が経つというのに、一向に製品になりません。『マジェスティックプリンス』などアニメ化されたのに、何で出て来ないのだろう?
パチンコ・パチスロ用に創造されたキャラクターが出て来れない大人の事情は推測が難しいです。単純に「売れん」と思うから引っ込められてるだけとしか……。
最近では『天元突破グレンラガン』『仮面ライダークウガ』といった既存の版権のコミカライズ作品の連載が始まっており、いささか本末転倒な空気も漂っております。
ただ、『仮面ライダークウガ』の脚本は『仮面ライダーアギト』以降、平成ライダーの成長・激動期に多くの作品でメインライターを務めた井上敏樹。
評論家・宇野常寛が平成ライダー最高傑作と評価する『仮面ライダー555』を手掛けた氏による平成ライダーの原点『仮面ライダークウガ』のリブートが読めるなんて凄い事です。こんな企画、模型誌『ホビージャパン』で通るかどうかって所ですから、数ヶ月前、第1話を読み終えた後は心の中で拍手しました。
『HERO'S』無料小冊子
平成ライダーも早や16年目――そろそろ、『仮面ライダークウガ』を観て大人になった人たちがホールデビューする頃ですね。そうした人たちが安心して(……と言うと語弊があるが)遊技できる業界であって欲しいです。
8コ保留や
まわるんパチンコ大海物語3が代表例ですが、エンドユーザーにとって「得」とは言えない情報・機種を詭弁で固めて提供するような業界では安心してもらえるはずがありません。
昨年の9月、米ニューヨーク証券取引所への上場で史上最大規模・250億ドル(約2兆7,200億円)の資金調達を果たした中国のネット通販最大手アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長は、「上場で大事なのは、お金を得る事ではなく、人々の信用を得る事だ」とスピーチしましたが、信用が集まらなければお金だって集まらないものですよ。
●追記
先日の記事で取り上げた、SANKYO・
F機動戦士ガンダム-V作戦発動-の「共闘宣言」ですが、諸般の事情により中止になった模様です。何だったんだ……。