『ネクスト・ロック・ゲート』
ギャンブル依存症について
掲載:2014/10/17 08:40
前ログの最後で「ギャンブル依存症問題」について触れたので、今日はこの件についてもっと掘り下げてみましょう。
10月6日の日遊協北海道支部のセミナーでは、専務理事が「カジノ法案」「自民党風営法議連」(「風営法改正議連」=パチンコ課税の事でしょう)「依存(のめり込み)問題取組の経緯」について、「この3つは、それぞれ別の事案だが、実は密接にリンクしている――」という説明を行っているので、これは今触れておかねばならない事案だと考えます。
まず、厚生労働省が8月20日に発表した国内の成人依存に関する全国調査結果ですが、成人約4,000人の面接調査から、パチンコや競馬などのギャンブル依存患者は成人人口の4.8%――推計536万人とされております。
でも、この536万人という数字――
多すぎやしませんか? 競馬などの公営ギャンブルも含まれるとは言え、『レジャー白書2013』によるパチンコ参加者数は970万人。これでは、ホールの客は2,3人に1人がギャンブル依存症という事になってしまいます。
先日、画像で紹介した書籍『日本版カジノのすべて』(日本実業出版社刊)には興味深い記述がありました。
一般的にギャンブル依存症の判定には、米国の精神医学界がまとめたDSM(精神障害の診断と統計の手引き)が用いられるらしいのですが、2008年に厚生労働省の主導のもとで行われた全国的なギャンブル依存症の有症率調査でも男女平均5.6%と非常に高い数値が示されました。
ちなみに、世界の水準は成人人口の0.3~2.1%です。
「ほら、だからパチンコのある日本は!」と批判するのは早計。2000年代に入ってから違法な電子ゲーム機による賭博行為が横行して社会問題になり、2006年には「成人娯楽室」の名称で営業していた射幸心を煽る電子ゲーム機(メダルチギ)店を法改正により全面的に営業禁止とした韓国では、何と9.5%という異常な数値が出ています。
そのため、DSMの判定指標となる設問は、「日本や韓国のように儒教的精神を背景とする文化圏に合っていないのではないか?」と疑問を投げかける専門家も多いようです。
ともあれ、「ギャンブル依存症」これは、競馬でも、カジノでも、パチンコでも、賭博とそれに類するものが供給されれば、世界中どこの国でも一定の割合で発生してしまいます。例外は一切ありません。
そして、これに関する議論では「○○を無くしてしまえ!」という極端な提案がなされがちです。
しかし、ギャンブル依存症の有症率9.5%と、日本の倍近い数字が出ている韓国の施策を考えていただきたいと思います。
前述の通り、韓国は2006年に法改正により射幸心を煽る電子ゲーム機店の営業を全て禁止しました。そして、国内に17店あるカジノも1店舗を除いて韓国人は出入り禁止。外国人専用です。
また、唯一韓国人の入場が許されたカジノ・カンウォンランドは、首都・ソウルから高速道路を車で3時間半ほど走った先の山奥にある施設になっています。
いわば、「ギャンブル依存症」に対して、徹底的な取り上げ策を実践した国と言えるでしょう。
ところが、判定指標に用いたDSMが国の文化的背景に合っていないのではないかという疑問はあれど、日本と同じ指標を用いて判定された「ギャンブル依存症」有症率が9.5%――。
『日本版カジノのすべて』の著者・木曽崇氏は、「依存症を発症する方々は、物事に極度に依存してしまう何らかの心理的要因を抱えているが故に『依存』になっているわけで、その依存対象物を害悪視し、社会からなくしてしまおうとするアプローチを続けたところで何ら根源的な問題解決にはならない」と指摘してます。
そして、精神医療の現場では、アルコール依存の患者からお酒を取り上げた所、依存の対象が薬物に移ったり、ギャンブル依存と買い物依存を行き来するといった症例――クロス・アディクトが報告されているとも述べておられます。
どうでしょうね? こうした事を踏まえると、ぱちんこ依存問題相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク(RSN)」への運営費支援や「パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊びです」といった帯広告の挿入という業界団体の取り組みは、何ら問題の根源的な部分には踏み込んでいないと思えるし、メディアも記事や映像のあり方を考える必要があると思います。
我々大人は、度の過ぎた喫煙・飲酒・薬物の利用が健康を損なう事を知っています。そして、適度な喫煙・飲酒が心を落ち着かせたり、薬物の利用が疾病の治療に効果がある事も理解しているはずです。
しかし、子供はそうした事が分かりません。喫煙・飲酒・薬物の利用に当たっては大人の指導が必要なのです。
私的にはギャンブルも同じだと思いますよ。ギャンブルは人間が造り出した最高の娯楽。娯楽無くして、人生が楽しいはずはありません。
子供なんて言い方をされると依存症を自覚している人はカチンと来るでしょうが、やはりギャンブルは大人の娯楽なので、自分が上手くつき合えていない現実はちゃんと受け止めて、ギャンブルとの向き合い方に方向修正を加えていただきたいと思います。
ちなみに、パチンコ・パチスロと上手く向き合えていない原因が収支的なものであれば、解決は簡単です。
ギャンブルではなく、遊技として向き合えばいい。
と言うか、ヘビーユーザー(パチンコ・パチスロを長時間打つ)と自覚している人ほど遊技として向き合ってもらわねばなりません。
ホールに存在するのは基本的に集金マシンですし、打てば打つほど負ける仕組みになってるんですから――。
この手の話なら、自分がある程度は相談に乗れます。
もし、上手く向き合えない理由が収支的なもの以外にあるなら、ぱちんこ依存問題相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク(RSN)」に連絡を。
機関名で検索すれば、連絡先が出て来ますので。