『酒と涙と本とパチスロ』
くすぐられる言葉
掲載:2014/3/28 18:45
酒飲みには、思わずピクッと反応してしまうような、または思わず飲みたくなってしまうような、そんな言葉があると思います。
どれがそうかは人それぞれで、十人十色。
酒や肴のイメージを表す言葉だったり、ダイレクトに酒そのものを示すものだったり、あるいは飲む場面を匂わす単語だったり。
私は過去にも申し上げてきた通り、安酒飲みで、かつ、チープ感が大好きな男。
無論、それだけでなく様々な言葉にも反応しますけれど、その中でも特に私に似たタイプの酒飲みの方々が良い反応をする言葉は、
『ガード下』ではないか、……と思うわけです。
ということで、某日。
前日の帰還が朝5時を過ぎていたにもかかわらず、その数時間後には既に寝場所を出ていた私。
あっちへふらふらこっちへふらふらと慣れない観光をしてみたり、道に迷ったり電車を間違いそうになったりと、まさに文字通りの「おのぼりさん」と化していた私でしたが、夕刻には当座の目的としていた場所まで着いていました。
そう、この日の主目的は、『ガード下』巡り。
実は、私はこの日のために気になる店の下調べをしていたのでした。
わざわざ大都会まで来て何をしてるんだとか、打つ店の下見はロクにしないクセに何故こういう時だけするんだとか、自分に思う時もありますが、まあそれはそれ。
日の残るうちの方が風情があると思い、第一目的の店へと向かいました。
携帯にメモしていた住所を頼りに店の場所まで行ってみると、残念ながら営業している気配が無い。
だからといって飲まないという選択肢など私にあるはずもなく。特にあても決めず、近くをふらふらと散策してみることにしました。
すると、そこで目に入ったのが、やはりガード下にあった焼き鳥屋。
気候も良かったためか入り口が開け放してあり、そこから流れ出る煙と香りがなかなか良い感じ。
思わず心が揺さぶられ、ひょいっと顔を入れて「大丈夫ですか?」と訊いてみると、店主と思われるダンディな男性に「どうぞっ!」と威勢よく言われました。
[1軒目]
そんなこんなで、記念すべきこの日の始まりは立ち飲みの焼き鳥屋から。
店内は、焼き台の前に一列のカウンターがあり、奥にコの字形になったカウンター、それぞれ上にテレビが一台ずつといった配置。立ち飲みなので、当然椅子は無しです。
一見が焼き台前というのもどうかと考えて、コの字カウンターの一番端に陣どることにした私。何も考えずに入店したため、特に深く考えずに「生ビール」と「ねぎ間」、それから好物の「なんこつ」を注文して待つことしばし。
ビールが到着してグイッと勢いよくジョッキをあおると、自分の中である変化が起きたことに気付きました。
今この時までの私は、右も左も都会の道理もわからぬ完全無欠のおのぼりさん。
しかし、酒を口にした瞬間から、私が「ただのおのぼりさん」から「ただの飲んだくれ」にクラスチェンジしたことが分かったのです。
それと同時に思考回路も飲んだくれ仕様にチェンジして思ったことは、先の注文が失敗だったという事実。
見た感じ、この店は立ち飲みながら焼き鳥はかなり本格的な様子、ならば焼くのにも時間がかかるはず。
それを考慮して、「枝豆」や「生キャベツ」などのすぐ出る系のつまみを一つ頼んでおくべきでした。
また、店の雰囲気から考えるに、飲む酒も「生ビール」ではなくて「ホッピー」、しかも、「中
(なか)」→「中」と繋いでいくべきだったはず。
「だったら今からそうすればいいんじゃね?」と思われるかもしれませんが、私の中には「立ち飲みとはサッと飲んでサッと出るべし」という思想がありまして、その基準から考えると注文回数はおよそ三回まで。
今から「中」×2まででは三回を超えてしまいますし、そこまで長居をする予定でもなかったですし。
そんなことを飲みながらつらつら考えていると、注文していた焼き鳥が到着。
(注:今回訪れた店では、お店の人からの撮影許可を全ての所で頂いています)
……で、この焼き鳥がですね、めっちゃくちゃ旨い。
ねぎ間は肉がはんなりとしていて塩加減も絶妙。
なんこつは見たことがないくらいに肉厚で、歯応えも良い感じにコリッコリ。
ふらっと入った店のレベルがこんなに高いとは……さすがは大都会。
ちなみに、画像左に見える駄菓子は突き出しとしてビールと一緒に出たものです。
さて、こうなると悩ましいのは、これからどうするかについて。
されど、予想外の旨さには確かに後ろ髪引かれるものがありましたけど、ここでビールをもう一杯というのも何か違う気がしまして……熟慮の結果、ここにはまた腰を入れ直して来ることにして、今宵は一旦店を出ることに決めました。
[結果]
生ビール___1杯
ねぎ間___2本
なんこつ_2本
計_____700円
店を出て、とりあえず目的店を目指した私。
道すがらの店も吟味しながら近づいてみると、遠目には店内に明かりが灯っているように見えました。
引き戸を開けて訊いてみると、17時半からとのこと。現時刻は17時前、ふ~む、待つには長いか……。
そんなわけで、またまた通りに繰り出した私。
しかし、その足取りは、少し前とは幾分違った、実に楽しげで軽やかなものとなっていたのでした。
______________________(続く…)