『スカイ・ロック・ゲート☆』
Waltz
掲載:2012/6/6 10:00
昨日、ネカフェで何をしていたかと言うと――。
【きゅっきゅさん】先日おススメ頂いたものを読んで来ましたよ。
Waltz
小学館は、荒川弘が週間少年サンデーで「銀の匙」の連載を開始するまで守備範囲外だったため全く知らなかったんですが、これ目茶苦茶贅沢な企画じゃないですか。
作家が自分の作品(小説)を、漫画用の原作として書き下ろすとかあまり無いです。
「魔王 JUVENILE REMIX」のスピンオフ作品という位置付けになってますが、小説読みからすれば、伊坂幸太郎の殺し屋小説――「グラスホッパー」や「マリアビートル」と同じシリーズと言われた方がピンと来ます。伊坂作品は様々な登場人物や事件を共有してるんですが、「Waltz」の登場人物は「グラスホッパー」に出て来ますし、その前日譚に当たる話なら、自分で小説として書いちゃって構わなかったんじゃないかと?
大須賀めぐみと組んだ、前作――「魔王 JUVENILE REMIX」がよほどお気に召したのでしょうね。
ちなみに、似たような企画としてはこんなのがあります。
闇狩り師-キマイラ天龍変-
夢枕獏の二大シリーズ「闇狩り師」と「キマイラ・吼」のクロスオーバー作品です。
伊坂作品が登場人物や事件を共有するのは、夢枕獏の影響らしいんですが、この作品も「闇狩り師」の主人公・九十九乱蔵が、若かりし頃、台湾で「キマイラ・吼」の登場人物・巫炎と対決したという、物語として語られた事の無いエピソードを漫画化したものです。
ただ、夢枕獏が原作を書き下ろしたわけではなく、作中でほのめかされているだけだったそのエピソードに対する漫画家さんの突っ込みを、「では、是非あなたが描いて下さい」と受けたというか、丸投げしたというか、そういう作品なのです。
だから、夢枕獏作品じゃないですよね。
読んでみたものの、自分は違うと思いました。ただ、漫画家さんもその辺は分かっておられるようなので、「痒い所を撫でて貰って気が紛れたよ、ありがとう」としか言えないです。
話がズレました、「Waltz」に戻しましょう。
伊坂作品って勧善懲悪ではなく、善も悪も混沌としたスッキリしない部分があるんですが、これもそういう話でした。
ただ、自分のようにロクでもない生き方をしていると、こうした作品が読まれている事に救われたりするんですよ。
ほら、これは殺し屋達の群像劇ですから、語られる倫理観など、「そりゃそうなんだけどさあ、それ以前に何か間違ってない!?」と言いたくなるものばかりです。
同じですよね、自分もこの台詞を言われたら返答に困るんです。
ふと、こうした物語を楽しむ事が出来る人の、心の余裕のお陰で、こんな自分にも居場所があるのだなと思ったり――。
心に余裕がある方、きっとこの話を楽しめると思います。社会からドロップアウトしちゃって、その先でも居場所を無くしてるなんて方、居場所を見つけられるかもしれません。
【きゅっきゅさん】今回も面白かったです。
ありがとうございました。
●文中敬称略m(_ _)m