『スカイ・ロック・ゲート☆』
戦闘妖精・雪風
掲載:2012/6/4 09:45
某メーカーがタイアップパチスロを開発中――。
これは聞き流せないので触れておきます。
「戦闘妖精・雪風」とは神林長平作の日本のSF小説。
ラピィさんのコラムで述べられていた通り、これを原作としたラジオドラマ・OVA・漫画が存在するのですが、ご存知の方いるのですかね?
マニアックなので、パチンコ屋に足を運ぶ客層には知名度が低いタイトルじゃないかと?
ちなみに、パチスロがOVA版を元にしているなら、タイトルは「戦闘妖精雪風」の「・」中黒無しになります(細かっ!)。
それでは、スロネタとしての大義名分も整いましたし、この作品に対する自分の思い入れなんかを語っちゃったりしましょうかね。
原作本
これは凄い作品なんですよ。
奥付を開いてみると
昭和59年2月29日
自分が読んだのは翌年ですが、刊行は今から28年前――。
まさに色褪せない名作って奴です。
2000年代に入ってからOVA化された時は、今頃かよと……。
ストーリーは8本の短編から成り、南極に開いた超空間通路から侵攻して来た謎の異星体ジャムと人類――フェアリィ空軍(FAF)の戦いが描かれます。
で、そのFAFというのが問題アリの組織でして、超空間通路の向こうに存在する惑星フェアリィでいつ果てるともなく続く消耗戦に人的損失を嫌った各国は、いつからかFAFに犯罪者や精神疾患者等の社会不適合者に訓練を施して送り込むようになってたわけです。
戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行部隊――通称ブーメラン戦隊に所属する主人公・深井零(レイ)も、そんな風にして送り込まれた社会不適合者の1人で、友人のブッカー少佐と愛機の雪風以外には心を開かない排他的人格者。
でも、そんな零がここにいるのは必然的な理由があるのです。
何故なら、零が所属するブーメラン戦隊とは戦術電子偵察部隊であり、その至上命令は絶対に帰って来る事。
未だ正体が掴めない異星体ジャムの情報を持ち帰るため、眼前の味方を見殺しにしてでも帰投せねばならない任を負った特殊部隊ゆえに、他者に関心を持たない零のような人間が必要とされていたのですね。
そして、必ず情報を持ち帰るためにFAF最強の制空戦闘機シルフィードを改修し、高度な電子戦能力と超音速巡航に適した大推力エンジンを搭載した戦術電子戦闘偵察機がスーパーシルフ――雪風です。
当時、中坊だった自分は、この辺りの設定を把握して痺れたものですが、この作品でグッと来るのはハードなストーリー。
物言わぬ機械と、それを心の支えとする孤独な人間の戦いが描かれていたはずが、異星体ジャムは人間を敵として認めていないらしいという事が分かると、物語は機械vs機械の様相を呈し始めるのです。
ジャムが敵とするのは、人間が作った機械達。じゃあ、この戦いにおける零達人間の立場は――?
それに気付かぬふりをしながら、激化するジャムとの戦いに身を投じる零。
「戦いに人間は必要だ」
しかし、雪風が被弾した機体と共に零を不要と切り捨てる衝撃のラストがやって来ます。
後継機――FRX-00メイウ゛に自己の中枢を転送し、パイロットを顧みる事の無い超絶機動でジャムを掃討する雪風。
他人に関心を持たない人間が、唯一心を許した機械に裏切られる結末は、甘ちゃんの中坊だった自分にとって実にショッキングでした。
今、読み返すと、ジャムと共に自身の古い機体を破壊する辺りに雪風の優しさを感じたりするし、この結末を理不尽とも思わなくなってるんですけどね。
なお、この話は冒頭の原作本から、15年も経った後で続編が出ました。
現在は原作本の改定版「戦闘妖精・雪風[改]」「グッドラック」「アン・ブロークン・アロー」の3冊が刊行されております。
続 編
OVAはその続編――「グッドラック」までの内容を元に再構成したものです。
興味を持った方は、パチスロが出るまでに原作を読んでおいた方が良いかも?
十中八九、パチスロはOVAが元だと思いますが、この作品は原作に尽きます。
ぶっちゃけ、原作を知らない人がOVAを観ても、作画以外感銘を受けない気がしたり……。
うん、断言します。雪風は原作を読んどくべき!
念のため、
「戦闘妖精少女 たすけて! メイウ゛ちゃん」はメカデザイナーの山下いくと氏の落書きから生まれたスピンオフ作品につき、「戦闘妖精・雪風」とは何の互換性もありません。
つうか、萌え要素満載のこっちの方がパチスロとしてはウケる気がしたり……?
いや、よく分かんないからいいや。