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【すぐる】
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『実践報告室(777)』
3月11日( 長文です)
掲載:2012/3/11 00:20

その日、俺は朝から工場で働いていた。

時計を見ると時刻は14:45。

勤務は15時までなのでもうすぐ終わる。

特に残業なども頼まれていなかったので、今日は定時で帰れるだろう。

だがこの日は上司が出掛けていたので、俺がその日の生産状況などをパソコンに入力して帰らねばならなかったので、勤務終了前にある程度のデータを纏めてしまおうとPCのある部屋に向かっていた、その時。

ゴゴゴゴゴ…

あの「揺れ」は起こった。

かなり大きな地震だと思われたので、頭上からの落下物がなさそうな場所で揺れがおさまるのを待った。

グラグラグラ…ガッシャンガッシャン!

揺れはおさまるどころか更に激しさを増し、機械も壊れるんじゃないかと思うくらい揺れ始めた。

バタン!

すると突然、全ての機械が止まってしまった。

壊れたか?と思ったが、照明も全て消えているからおそらく停電したのだろう。

「逃げろ、逃げろ~!」

誰かがそう言って走り出したのを皮切りに、皆一斉に近くのドアや開いているシャッターに向かって走り出した。

俺も釣られて出入口に向かって駆け出した。

が、走れない……。

コンクリートの上を走っているはずなのに、まるでプールに浮かべた発泡スチロールの上でも走っているかのように、うまく床を蹴ることができないのだ。

平行感覚がおかしい時みたいに、手でバランスを取りながらなんとか走る。

チャリン! チャリン!

何もなかったはずの周囲の床で、金属片のような物が落ちる音がする。

…天井の金具か!?

こいつはいよいよヤバイかもしれないと必死にドアに向かって走る。

壁や柱にぶつかりそうになりながらもなんとかドアまでたどり着き、勢いよく外に駆け出す。

パリン! パリン!

割れた窓ガラスが地面に落ちて砕け散る。

地震で外に出る時は屋根から瓦などが落ちてくる可能性もあるから気をつけようと言うが、いざその時になったらそんな余裕はなかった。

俺より先に外に避難した人が、建物からちょっと離れたところに集まっていたので、俺もそこまで駆け寄り思わずしゃがみ込む。

まだ地震はおさまっておらず、周辺の木々などもユサユサとざわめいている。

すぐさまポケットから携帯を取りだし、「大丈夫?」とだけ書いたメールを嫁宛てに送信した。

これだけの大きな地震だとおそらく電話やネット回線なんかはすぐにパンクするだろう。

だから揺れがおさまってみんなが家族との連絡を取り出す前なら、まだメールが届くだろうと判断。

家にいる嫁や足の不自由なおばあちゃんが心配なのもあるが、こちらからメールを送っておけばとりあえず俺が無事だということは嫁に伝わるだろう。

俺が携帯を弄っているのを見た他の人も電話を掛けたりし始めたが、やはりもう繋がらなくなってしまったらしい。

嫁からの返信もない…

揺れが緩かになってきたので、一先ず避難場所になっている駐車場に集まり、同じ職場の人がいるかどうか確認をすると、どうやら今出勤しているメンバーはみんな無事だったようだ。

工場長がこれからどうするかの指示を出さねばならぬのだが、軽くテンパっていて今一頼りない。

というかみんな連絡の取れない家族が心配なわけで、一旦帰って家の状況や家族の安否を確認したいのだ。

とはいえ何度も大きな余震が続けて起きているから車を運転するのも怖いし、これだけの地震じゃ道路や橋も無事かどうかわからないから帰れるかどうかすらもわからない。

みんな何度も電話を掛けたりメールを送信してみたりするが、連絡取れず…

インターネットはかろうじて繋がるようなので、「俺は生きてるよ!」と呟いてみた。

と、携帯を弄っていたらメールの着信が!!

相手の名前は嫁だ!

「メール来た!!」

あまりの嬉しさに思わず口に出して言ってしまった。

これで嫁が生きていることはわかった。

でももしかしたらメールには良くないことも書いてあるかもしれないと心して開いてみると…

『みんな無事だよ(鳥の絵文字)』

よかった…

僕にはまだ帰れる場所があるんだ…
こんなにうれしいことはない(T-T)

なぜ鳥の絵文字なのかは謎だが、それくらいの余裕はあるってことだろう。

仕事のほうは工場内の被害状況の確認やガス設備などの安全対策に何人か残ってもらって、あとは解散ということになった。

問題は誰が残るかだが…

俺「じゃあうちはとりあえず家族の無事を確認できたので、俺残りますわ。」

家族が無事だとわかったら心にも余裕が生まれた。

電話しか連絡手段のない人は依然として家族の安否がわからないままだし、そういう人はまず帰ってもらおうとなった。

工場の自家発電機で電気を確保し、残ったメンバーで手分けして状況確認とガス・電気の安全確保をすることになった。

その後も、何かあった時のために何人かは待機していてくれと言われ、結局俺が退社したのは7時半だった。

車のラジオをつけると津波による被害が甚大なことと、福島原発事故の報道が流れていて、歴史に残りそうな日であることを知る。



あれから1年…

福島・茨城あたりは今でも毎日のように地震があります。

東北沿岸部は未だに復興が進まない地域もあると聞きますし、福島原発の近くも避難命令が出たままですので、荒廃した街みたいになってるらしいし。

今のこの日本で、数十kmに渡り立ち入りを禁止されている区域があるなんて…

ちなみに、日本には発電用原発が17箇所に54基あるらしいです。

その内、現在稼働中の原発っていくつあるか知ってます?

54基中、2基だけですって。

その2つも遅くともゴールデンウィークまでには点検停止するそうです。

なんだ、原発なくても日本の電気を賄えるんじゃん。

詳しいことは知りませんが、だったら原子力なんて使わなくてもよくない?

せめてもっと科学が発達して、処理や治療がしっかりできる時代になってからにしてほしいわ…


ちょっと去年のことを書くつもりが長くなってしまいすいません。

では最後に、災害や事故の犠牲者となられた方々に謹んで哀悼の意を表します。

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